〜Aパート〜
・これまでのあらすじ
色々あった。
学園都市へ帰って来た佐天。天草式の五和との出会いを経て、少しは変わったのだろうか。
〜〜〜〜〜
「インちゃぁ〜ん!」
佐天はインデックスに頬ずりしながら歩いていた。
結局、日常に帰って来ても佐天がインデックスに向ける狂気の愛は何も変わらない。
それを人は↓のように呼ぶ。
ネタバレ:インちゃんが可愛い。
「ねえ、るいこ。とうまったら酷いんだよ。私に内緒でから揚げをスフィンクスにあげちゃうし」
「私の家に来たらいくらでも食べていいのよ」
「わぁ。るいこ大好き〜」
インデックスはインデックスで餌付けしてくれる人なら誰でもいいのかもしれない。
佐天とインデックスが二人きりで食べ歩きをしていたが、佐天はそれだけで幸せだった。
だが全てがそんな上手く行く訳がない。
この学園都市には幻想をぶち殺す少年が居るのである。
「むっ、この匂いは……っ! 上条さんと御坂さん!?」
佐天はこの近くに上条と美琴が居そうな感じを察知した。
最近、佐天は妙に鼻が効く。
これまでもマネーカードを拾いまくったり、何かと探知系能力に向いてる節はあったと言われていたが、その能力が開花したのだろうか。
「イ、インちゃん……回り道をしていこっか」
美琴はともかく上条とはあまり顔を合わせたくなかった。
彼に説教されたおかげで迷いが吹っ切れた経験も佐天にはあるが、それでも彼女にとって上条はインちゃんと一緒に暮らす恋仇なのである。
「えー。この方向から美味しそうな匂いがするんだよ」
しかしインデックスはむしろ上条達が居そうな所へとことこ歩いて行ってしまう。
「イ、インちゃん!?」
そして回り角を巡った所で、本当に上条と美琴が居たのだから困る。
「あ、とうま!お腹すいたんだよ!」
「不幸だー!」
インデックスは出会い頭に上条のウニ頭に齧りついた。
「む、短髪。さてはとうまは一人だけ短髪に美味しい物を奢ってもらったんだね。私にも食べさせるんだよ!」
「違うっつーの!上条さんは御坂に宿題を教えてもらっていたのですよ。なあ、御坂」
「え?ああ、そうね。そこのバカには色々と借りがあるし……どうしてもというから教えてやってるのよ」
よく見ると上条と美琴が座ってるテーブルには宿題のプリントや筆記用具が散乱していた。
美琴が通っている常盤台中学は学力が高いお嬢様学校だ。
一方、上条の通う高校はレベルとしてはそう高くない。
上条(高校生)の宿題を美琴(中学生)が教えてやるという事も有りえなくはないのである。
「夏休みの宿題のツケも溜まってるし、それに『大覇星祭』が近づいてきてるから宿題は多くなるんだよ」
「『だいはせーさい』って何?」
「学園都市で行われる運動会みたいなもんだな。一週間くらいかけてやるからその前に勉強しなきゃいけないんだよ」
後の展開の伏線です。覚えておきましょう。
だがそんな事を知ったこっちゃない佐天さん。
インちゃんが上条とイチャついてる(ようにしか見えない)光景に対して、まるで世界の終わりのような表情を浮かべていた。
「あ……あっ!」
「さ、佐天さん居たの!?」
美琴も佐天がインデックスと一緒に居た事にようやく気付いたようだ。
しかし後の祭りである
「あああああっ!インちゃんから離れて下さい上条さん!そうやっていつもインちゃんと噛みつきプレイしてるんですね!ずるい!」
「してねーよ!」
「な……何よ噛みつきプレイって!」
「御坂まで!?おい、御坂も佐天も上条さんの事を誤解してますよ!」
そして上条は幻想をぶち殺す一言を放った。
「上条さんは超硬派ですよ(キリッ」
(無言)
「んな訳あるかぁーっ!」
そして美琴と佐天の友情タックルが上条に炸裂した。
その友情パワーによって上条が吹っ飛ぶ。
「ふ、不幸だ……っ」
お約束の一言を呟いて上条は気を失う。
上条という男、説教しようとするとギャグ漫画の主人公のような耐久力を誇るが、日常に帰ってくると途端に不幸になって弱体化するらしい
だが上条はすぐさま起き上がる。
結局、上条という男は人間離れした耐久力が最大の強さなのだ。
「今日はありがとな、御坂。後、なんだかんだで佐天もインデックスの面倒みてくれて助かったわ。とりあえず俺帰るわ。じゃあな」
「ばいばい、るいこー」
そしてインデックスは上条に齧りつく。
上条は頭部に齧りつくインデックスをそのまま乗せながら去って行った。
その姿は超硬派なつもりなのだろう。
後には美琴と佐天だけが残されていった。
「あ……佐天さん」
「御坂さん……もしかして上条さんの事好きなんですか?」
「へっ?な、何言ってんのよ佐天さん……」
だが美琴はここ一カ月で雰囲気が変わった。
髪留めは知らない内に花柄の女の子っぽい物になってるし、妙に顔を赤くする事が増えた。
『能力を無効化する男(多分、上条の事)』の話をしても前はイライラしてたのに最近は顔を赤くする事が増えた。
なので佐天は美琴にこんな話を持ちかけてみた。
「そういえば御坂さん。私、噂では巨乳御手(バストアッパー)という物を見つけまして……」
今までなら幻想御手のノリでスルーされていたが、最近の美琴は違った。
「おお〜」
食い付きまくりである。
「最近、白井さんの胸の谷間が増えましたよね」
「そういやそうかもね。黒子の奴、昔は見るからにペッタンこだったのに……」
「あれも私が巨乳御手を勧めたからです」
「佐天さんまじ半端なくない!?」
「御坂さんもどうですか?巨乳御手」
「ふっ……ちょっとくらいズルもいいかもね。別に減るもんじゃないし。あ、別にあのバカが喜ぶかな〜とかそんなんじゃないんだからねっ」
「流石は御坂さん……自販機蹴りの名人ですね」
「佐天さんこそ……」
そして美琴と佐天は固い握手を交わした。これが友情……っ!
だがその友情を眠そうな笑顔で見守る少女が居た。
「面白いですね、御坂さんと佐天さんの友情」
「う、初春さん!?」
それは頭がお花畑の風紀委員(ジャッジメント)の初春飾利であった。
だが一つ違う事は初春はたくましいアホ毛の幼女を連れているという事だった。
「うわーい。お姉ちゃんにくっついてくれば『お姉様』に会えるって本当だったんだーってミサカはミサカは関心してみたりー」
美琴はアホ毛の幼女に気づいたようである。
だがその喋り方に聞き覚えがあるような……。
「この子は?」
「迷子です。子供を送り届けるのもジャッジメントの仕事ですから」
「初めましてなのってミサカはミサカは自己紹介してみたり。ミサカはミサカ20001号で打ち止め(ラストオーダー)ってコードネームで呼ばれてるんだってミサカはミサカは解説したりするの」
「ミサカ……って、あんたまさか!?」
そう、美琴にはこういう喋り方をする人物に覚えがある。
美琴のクローンとして生み出された「妹達(シスターズ)」。
2万人以上居たはずだが、現在は「とある悪党」のせいで1万人程しか居ないはずだ。
だが妹達はゴーグルを除けば美琴と瓜二つの体系をしているのに対し、この打ち止めという幼女は明らかに幼い。
美琴も知らない存在だった。
「どういう事なの? 初春さん」
「あー、もしかして私のハッキング能力を疑ってますか?そりゃ暗部に目をつけられるのは嫌ですけど、私が調べた時点ではアホ毛ちゃんの存在はトップシークレットだとかそんな所でしょうか。実際、アホ毛ちゃんも『あの人も知らなかった』とか言ってましたし」
「あの人?誰?」
「さあ?」
深刻そうな話をしてる美琴と初春をよそに、佐天はいつもの行為に及んだ。
「うーいはるぅ。インちゃんに捨てられて傷心だからスカートめくらせてぇ」
そして停滞期のノリで佐天は初春のスカートをめくりあげる。
だがスカートの下にあったのはパンツではなくて短パンだった。
「何ィっ!?」
「ふっ……佐天さん? この初春飾利のスカートをめくり続けられると思ったら大間違いですよ。私も御坂さんを見習ってスカートの下に短パンを装着したのです!」
初春はどや春となって佐天を挑発する。
美琴はスカートの下に短パンを履いているが、それを対佐天さん用にパクったのである。
だが佐天の闘志は斜め上に燃え上がるのだった。
「いいよ、初春。短パンが御坂さんの作ったシステム通りってんなら……まずはそのふざけた短パンをずり降ろす!」
そして佐天は初春の短パンをずり降ろす。
だが短パンの下にパンツは無かった。ノーパンだったのである。
「き……きゃーっ! な、何するんですか、さ、さ、佐天さん!」
これがいつもの反応である。
だがいつもと違うのは初春が短パンの下はノーパンである事だ。
周囲の通行人達は、ある者は目をそむけ、ある者は凝視し始めた。
「いや……なんだろ、ごめん初春」
とりあえず謝る佐天。
「佐天さん……」
流石の美琴もマジで引いていた。
「なるほど。『サテンサン』は低能力者のスカートをめくってくる変態さんだとお姉ちゃんが言っていたけどミサカはミサカは納得してみたり」
打ち止めもまた妙に納得してる様子だった。
カオスのような状況出会ったが、さらにややこしくする人物がその場に現れる。
「あ〜らあらあら。初春が本部に居ないと思ってたら、この為の口実だったのですのねぇ」
「こ、この声は『とある変態の風紀委員(ジャッジメント)』!?」
「い”え”っ! 黒子ですの!」
見上げると黒子が電柱の上にいた。
黒子は電柱の上から消えたかと思うと、次の瞬間に初春にドロップキックをかましていた。
「ひゃあっ!」
初春は間の抜けたような声をあげる。勿論、テレポート蹴りだ。
「大覇星祭の仕事を押し付けて自分はお姉様と密会してるなど許せませんですの!早く支部へ帰るですの」
「えー、面倒くさーい」
「いえ、初春はこの際どうでもいいですの」
「ああ〜ん♪」
黒子はポイっと初春をテレポートで投げ飛ばす。
黒子の能力は『触れた物』をテレポートさせるという物だ。
「それより佐天さん。私は貴女の実力を見誤ってましたの!」
「へ?何言ってんすか、白井さん」
「そのスカートめくりですの!」
(テテーン♪)
「あのスカートの下に履くふざけたお召し物を剥ぎ取るその手腕。黒子は感動しましたの。まさに淑女!」
「淑女ってのは変態って意味だよねってミサカはミサカは思ってみたり」
「その通りですの!ですが佐天さんはその素晴らしい能力を無駄遣いしてますの」
「無駄遣い?」
「そうっ!初春のスカートではなくもっと上のスカートを狙うべきですの!ぶっちゃけお姉様のお召し物を剥ぎ……でぇんっ!」
黒子は全てを言う前に美琴の拳(ビリビリ入り)によって殴り飛ばされる。
「アホか!あんたは何、佐天さんを変態の道に引きずり込もうとしてるのよ!」
「変態の道ではありませんの。淑女の道ですの」
「どっちでも変わらないっつーの……」
「い”え”っ!分かってないのはお姉様ですの!無能力者であろうと超能力者であろうと常に上を目指す事が大事なんですの!淑女として!」
そして黒子は淫卑な笑みを浮かべて佐天に向き合う。
その胸の谷間は以前より大きくなっているが、それは佐天が勧めたという巨乳御手のおかげなのだろうか。
その淑女☆スカートめくりを美琴に向かって放つ佐天と黒子に対し、初春は眠そうな瞳で呟いた。
「淑女の白井さんきも〜い」
「あ、アレがお姉様にストーキングしてる『シライサン』なのねってミサカはミサカは驚愕してみたり」
「そうですよぉ。だから白井さんには気を付けてくださいねぇ。あの人は御坂さんの使用済みノートに1万円出せる人ですから18万円だってすぐに出すでしょう。私も一人の人間をダッチワイフ扱いするような白井さんなんか観たくないですから」
「うん、『シライサン』には気をつけろってミサカ達に伝えておくべきだってミサカはミサカは解釈したの」
どこか生温かい初春と打ち止めの視線を他所に、黒子と佐天はヒートアップしていた。
「さあ、佐天さん!まずはステップアップとして私のスカートをおめくりなさいませ!そして黒子の大人パンツをお姉様にィィィ!」
黒子の慟哭は佐天に伝わったのだろうか。いや言うまでも無かった。
佐天はフッと笑みを浮かべる。
「白井さん……私もいつまでも初春のスカートだけに拘ってる訳にはいきませんよね……」
「佐天さん……っ!」
「やりましょう!私達の淑女コンビの力を!」
「ちょっ、黒子も佐天さんも止めてってば!」
美琴の言葉も届かず、そして黒子は跳ねた。
「いきますわよォォォォォォォ!!」
佐天は異空間を超えたアクロバット・スカート・めくりを放った。
「おりゃああああああああ!」
――女には負けると分かっていてもスカートめくりしなくてはならない時がある。
〜 Bパート 〜
・これまでのあらすじ
佐天さんと黒子の友情☆スカートめくりが美琴に炸裂したかと思われたが、自販機蹴りで培われた犯罪☆キックによって黒子は迎撃された。
ちぇいさーっ!
「さ、流石はお姉様……いい蹴りでしたの……」
黒子は痙攣しながらも呻く。
女には負けると分かっていてもドロップキックしなければいけない時がある。
でも負けるのだ。
「つーかあんた何、佐天さん巻き込んでるのよ!」
「いえ佐天さんは淑女ですの!」
「ふっ……御坂さん。この私をいつもの佐天涙子と一緒にしてもらっては困りますよ」
一方、美琴に迎撃されず無傷の佐天はガイナ立ち(腕組みポーズ)を行いながら不遜に呟く。
「いや佐天さん。あんま黒子の影響とか受けないでよ……」
「いえ、どっちかというと上条さんの影響が大きいかなーなんて」
「え?あいつがどうしたっていうのよ……」
「私、あの人からインちゃんを寝とりますから。決してインちゃんENDには到達させません。神様が『見えたぞ、エンディングが!』とか言ったら神様ですら殴り飛ばします」
「さすがは佐天さん!あのような類人猿には負けないよう陰ながら応援してるですの!」
そんなカオスな状況の中、打ち止めと初春はやや距離を置いてみていた。
「ねえ、どうして『サテンサン』はお姉様に蹴り飛ばされなかったのってミサカはミサカは聞いてみたり」
その様子を初春はこう分析する。
「け○おん!でムギちゃんがりっちゃんに殴られづらいのと似た現象ですよ、アホ毛ちゃん」
「ふ〜ん。後でミサカ達に聞いてみようっとミサカはミサカは覚えとく」
しかし初春の眼から見ても佐天は変わったのかもしれない。
思えば美琴と入れ替わるように佐天が「イカ」に対して強烈な愛情を見せるようになった。
そして現在の佐天は上条当麻と共に暮らしてるらしい「インちゃん」に対して執着を見せている。
その「インちゃん」は美琴や黒子とも面識があるらしい。
また美琴にしても、どうにも上条に惚れている節がある。
黒子ですら(気に入らないだろうけど)愛する美琴が男に惚れてる匂いを察知してるのだから、初春だってそれくらいは分かる。
恐らく佐天はもっと分かっているのだろう。
「変わって行くものですねぇ」
変わらない物はない。
夏休みが始まってから、知らない所で何かが変わっていってるような気がする。
最近、佐天が学園都市から外出したと聞いた。
調べてみるとその日は上条当麻も学園都市の外へ出たという。
何かの影が自分達の日常にも忍び寄ってるような気がする。
変わって行く物に対して多少の不安を感じる初春であったが、そんな彼女の手をしっかりと握る少女が居た。
「大丈夫だよってミサカはミサカは思ってみたり」
そう呟く打ち止めの姿はその肉体年齢以上に大人びてるようにも見えた。
「ミサカが遊びに来てみたのは『お姉様』がちょっと不安だったからだってミサカはミサカは暴露してみたり」
「御坂さんが不安だったんですか?」
「そうなの仕方ないんだけど『ミサカ達』も『お姉様』もみんな『あの人』の事を恐れてるのってミサカはミサカは勘付いてたり」
「あの人?上条さんですか?」
「ううん」
打ち止めは首を横に振る。
「とりあえずお姉様はミサカ達の事は背負わなくていいんだとミサカはミサカは思った」
「そっか。じゃあ『あの人』が居ればアホ毛ちゃんも安心だって事ですね」
「そうなんだよってミサカはミサカは伝えたかったり」「
そっか。良かったですねぇ」
初春は何気なく打ち止めの頭を撫でる。
その間も佐天・美琴・黒子の三人は何やらイチャついていた(?)
「だーから。どう考えても佐天さんがおかしくなったのはあんたのせいでしょうが!」
「い”え”っお姉様!佐天さんには最初から淑女の素質があったのですの!」
「そうですよ!インちゃん大好き!」
その三人を初春は出来るだけ他人のような遠い目で見つめていた。
「あー。面白いですね、皆さん」
―――変わらない物はない。美琴も佐天もそれぞれの世界を見出して変わって行く。
それが辛いことなのか、それとも楽しいことなのかは、初春にはまだわからなかった。
〜〜〜次回予告(誰がなんと言おうと次回予告)〜〜〜
佐天は美琴&黒子、初春&打ち止めと別れて一人さすらう。
その前に謎のチンピラ集団が現れる。
彼らは「座標移動(ムーブポイント)」の能力者・結標淡希のハーレム要員であった。
佐天は金属バットで立ち向かうが数の暴力には敵わない。
しかし、そんな佐天を救ったのは謎の白髪の少年だった。
「人を散々悪党扱いしやがって、てめェのやってる事と言えば手先に『善人』いじめとはなァ。美学ってのが足ンねェよなァ」
佐天を助けた白髪の少年はそんな感じで強烈な印象を与えて去って行った。
しかし佐天が結標淡希なる人物に狙われてるのは本当であった。
その理由は先ほどの「法の書」争奪バトルに巻き込まれたかららしい。
一方、黒子は初春との連携で「外」から来た黒服をボコって持ちこまれた謎のトランクを入手する。
しかしそれを奪おうとして来た結標淡希は、黒子以上の空間移動系の能力者(テレポーター)だった。
黒子は結標とのタイマンに敗北してしまう。
だが結標はトランクの中身である「残骸(レムナント)」のみならず、「外の能力者(魔術師)」を撃破した佐天に興味を抱いていた。
既に佐天と魔術が交差した事によって学園都市の計画(プラン)は大きくブレ始めていた。
しかしそれすらも楽しむ理事長、アレイスター・クロウリー。
美琴は単身で乗り込み結標達にプレッシャーを与える。
しかし黒子は本気を出した結標は美琴では敵わないであろうという事を知っていた。
テレポートで心臓に刺されば終わりだからだ。
黒子は今、美琴が結標を圧倒できるのは「超能力者(レベル5)」という肩書きによるものだと知っていた。
「どうやらここから先は私の出番のようですわね。さぁ、行きますわよ白井黒子。必ず帰ってくるために、戦場の一番奥へと……」
黒子は先ほどの敗北で負った傷の痛みを引きずりつつ、結標に単身挑む。空間能力者(テレポーター)の黒子であれば結標に勝てる確率が万に一くらいはあるからだ。
だが黒子の前に一人の少女が現れる。
「佐天さん……ここは貴女が来る所ではないですの!」
それは佐天だった。
「ふっ……愚問ね白井さん。御坂さんに置いてけぼり食らって寂しい思いをしてるのは一人じゃないんですよ」
「佐天さん……ですがっあなたでは結標には敵いませんですの!」
そこに携帯で割って入る初春。
「白井さーん。女の熱血とか流行りませんよー」
そこで初春は状況を解説する。
・結標淡希は「残骸(レムナント)」と「佐天(魔術師を撃破した人物)」を手に入れようとしてる事。
・結標の「座標移動」は黒子であれば吹き飛ばされずに済む事。
・結標は「外の組織」に操られてるだけらしい。
・その「外の組織」を固法先輩やアンチスキルの黄泉川達が潰してくれれば結標と美琴に戦う理由はほぼ無くなる。
・初春が言う所では「アホ毛ちゃん曰く、レムナントが復活しようがしまいが『あの人』とやらはミサカ達を殺したりはしないそうです」とのこと。
そして黒子と佐天は出した答えはこうだった。
「うむ。さっぱり分からん」
「ですの」
だが状況が分からなくても、やらねばならぬ事は分かる。
美琴と結標の戦いを止めなければいけない。
しかし美琴はこの近くのどこかに居る。追い詰められた結標は美琴を殺してしまうかもしれない。
佐天は決意する。
「じゃあ私が御坂さんを止める……ってのはどうかな」
黒子にはその言葉の意味が理解できていた。
「まさか佐天さん……お姉様に勝負を挑むおつもりですの?」
それは最弱(無能力者)の身で、最強(超能力者)に挑む禁断の行為を意味していた。
それがどれほど無謀な事か黒子には良く分かる。それも佐天は幻想殺しなど持たないのだ。
だが佐天の決意は変わらない。
「ここで箔付けとかなきゃいつまで経っても、あの忌々しい上条さんからインちゃんを寝取る事なんて出来ないだろうしさ」
「佐天さん……そう言う事なら分かりましたですの」
黒子も佐天の覚悟を受け止める。
それは美琴が誰かを殺せるような人間ではないと黒子も確信してるからだろう。それが佐天であれば尚更だ。
その弱みに付け込んででも美琴に食いつかなければ置いて行かれる。佐天はそう感じていた。
だがそれも黒子も同じである。
「ええ。私達の淑女☆パワーでビリッと解決ですわよ」
「ええっ!」
「あー。私は痛いの嫌だから待ってますね〜。淑女は白井さんと佐天さんだけでどうぞ〜」
まるで他人事のような流し方である。それが弄られやくとしての初春の流し方だったのかもしれない。
「初春……あんたいつか痛い目にあうよ」
「というか帰ったらぶっ飛ばすですの。このニート」
「ええっ!淑女宣言しないだけでニート!?」
しかし初春がその後に出した言葉は心の底から願うような声だった。
「でも死なないでくださいね。白井さん、佐天さん」
「当然ですの」
「んじゃ、ちょっくら御坂さんに説教してくるわ」
そして黒子は結標の元へ跳び、佐天は美琴の元へ駆けた。
―――必ず生きて帰るために。日常へ帰す為に。
佐天と科学が交差する時、物語は始まる。