ねえ、永遠なんてね。

 本当は、なかったのよ。

 知らなかったの。

 永遠がそんな、悲しいものだってわたしは知らなかった。

 知らなかったのよ。

  東方望月抄 The eternity is always there.



「いい、妹紅様。
 姫の能力は、永遠と須臾を操る事。それが原因で処刑されて色々あって今に至るって訳。
 永遠と須臾には境界がある。
 でも姫の場合はスキマ妖怪よりも永遠と須臾の境界を操る事が上手かったのよ」

「お前の発言はいちいち胡散臭いのよ、八意。
 そもそもあのバカは月の姫なんでしょ? 姫って事は偉い人の娘って事じゃないの」

「まさか。まあ引きこもってばっかだったのは事実だけど」

「一体あいつはどれほど悪い事したんだか。共犯のお前も閻魔様に裁かれた方が良いんじゃないのかね」

「蓬莱の薬は作った事より使った事の方が問題だから、閻魔様にしたら貴方も姫の共犯になるでしょうね」

「兎の声が五月蝿くて聞き取れないねぇ。少しぐらい間引いた方がいいんじゃないのか?」

 あの頃の私達は、永遠を信じていた。
 だけど永遠なんて本当は自然界に存在しなかったんだ。



 月の残党。
 それらが永遠を求めて永遠亭に殺到する。
 迎え撃つ兎角同盟。

 だが月の残党は強かった。

「無理です! 敵の勢力は、こちらのそれを遥かに上回ってます!」

「無理でもやるのよ!」

 ”家族”を守るために、永遠の末端は覚悟する。

「し、師匠。姫を気絶させて何を……」

「どう考えてもね、こうするしか姫と永遠亭を守る方法はなかった。ウドンゲ、後は任せるわ」


 蓬莱の薬、いや永遠を体内で爆発させる。
 永琳が主と家族を守るために取った方法がそれだ。
 妹紅の「フジヤマヴォルケイノ」を大規模にした物。

 人はそれを


「な、なんだ! あれは!」

「あはははは! 私だって永遠が本気出せばこれほどの出力を出せるなんて思ってなかったわ」

 自爆と言う!

「ああ、永琳…… 永琳!」


 永遠にも境界がある。
 境界の向こう側には須臾がある。
 千兆分の一の世界。

 永琳は須臾となった



「それでお前は飲んだくれてる訳」

「何よ妹紅。別に私が何してようが関係ないじゃないの」

「お前の都合なんて知ったこっちゃないよ。負け犬風情が」

「そーよ、私は負け犬よ。ヘタレよ。目の前の焼き鳥にだって勝てやしない」

「語るに落ちたねぇ」

「永遠なんて須臾と紙一重なのよ。境界を越えたら消滅あるのみ。私も貴方もね」

「そうかい。だがこれだけは忘れるな」


 お前も人間だ。人間で沢山だろ?

 そうやって言いきれるから貴方は強いんでしょうね。妹紅



 今始まる月と永遠の最終戦争。

「永遠亭以外、最悪でも人里を歴史から隠して欲しいのよ」

「心中穏やかじゃないな。妹紅と決着でもつける気?」

「まさか、あいつは関係ないわよ。相手は月の亡霊」

「そこまで危険な連中だというのか。貴方の同胞というのは」

「だからあの時、月を隠したつもり。あの連中は地上人の命なんかどうとも思ってないわよ」

「貴方も?」

「さてどうかしら。少なくとも私は月人の誇りを持った地上人のつもりですが?」

「話はわかったわ。里の人間に手出しはさせない」

「礼を言うわ」



「月の連中とドンパチやるんだろう? 私も手を貸そうじゃないか」

「げー、マジなの」

「それマジ? 妹紅が加わってくれたら百人力だよね!」

 共闘の申し出に対して、てゐとメディスンは正反対の反応を見せる。

「ふん、勘違いするなよ。私が気に入らないのは月の連中じゃない。輝夜だ。
 だがあいつとの殺し合いを邪魔するというのなら、そいつらを排除してからというだけだ」

「貴方がつっかかってくるなら今遊んであげたつもりなんだけどね」

「後の楽しみにしようじゃないか。それとも今遊んで欲しけりゃ殺してやってもいいけど?」

「遠慮しておくわ」

 今、最後の戦争が始まる。

 永遠と須臾の境界を、越える


「永遠なんて、無かった。ねえ、そう言ったでしょ? 不比等さま……」



東方望月抄 
The eternity is always there.


 連載予定皆無。


〜了〜




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